魑魅魍魎の菊
「……薄幸そうな顔立ちだな」
「今直ぐここで公開SMプレイですもしますかぁあああ??!!」
何なんだよコイツ等…。どうせ私は地味で薄幸で残念な顔をしてますよ、すぐに光に埋もれてしまいますよぉぉおおお?!
(あれ…また、自分の自尊心をズタボロにしたような気がするよ)
心の中で泣きながら、大槻基「瑠璃丸」の着物を綺麗にしたのだ。——玖珂君も相当な美形だが、大槻様も相当な美形だね…。永い時により一層綺麗になっちゃった感じ。
「……大槻様も罪なお人よね。こんなに綺麗でさ、神様になって余計に美しさを増した感じ」
「…貴様は私の何を知っているんだい。そんな事を言ったらお前さんだって、——普通の娘さんの"姿"をしている」
「"姿"だけ、ですけどね」
最後に大槻の帯を綺麗に結んだ。そして菊花は茂った竹林の中を颯爽と歩き出す、その後ろに「影」によって拘束された大槻が着いて来る状態になる。
夥しい数の蝶と蛍が大槻の後ろに着いて来る——美しい、だけど美し過ぎて吐き気がするんだ。
(…私はこれからどうなってしまうのか)
なすがままになっていると、見覚えのある道に入った。それはこの地とは北西——つまり丑寅にある祠への道と——
「……一百鬼夜行の頭がこんなまでするのか」
大槻の口からそんな疑問が飛び出た。
「実際にしちゃっているのですから、するんじゃないんですか?」
「貴様、何度も問うが普通の人間がこんな事出来るはずないだろう…。それとも陰陽師の類いか」
「いやいや、そんな全うな存在じゃないですよ?」
……大分、夜が濃くなってきたわね。周りに飛んでいる蝶が月光に当たって、ぼんやりとした青が醸し出される。
「ここだけの話。…大槻様が初めて言う相手ですけど、私は人間であって人間じゃない」
——この意味、解ります?