魑魅魍魎の菊


「…はっ…?」

「もう一つ言えば、"妖術師"なんです私」



キョトンとしてしまった大槻様を見て、私はクスリと笑ってしまった。そして…目的地である場所の入り口に辿り着いたのだ。


辺鄙な森のようだが、ここからは神の聖地でもあるが物の怪の世界へと続く境界線。

——そして、菊花はその入り口に腰を下ろして隣に大槻も座らせた。


「お、おいっ…。一体どういうつもりなのだ!!」

「どうもこうも無いですよー。あまりにも玖珂家の足取りが遅いので待つだけです。貴方は別に滅されても構わない、だけれどどうせなら…私を殺してから滅されたい」


でしょう?と首を傾げれば、図星なのか唇を噛み締めた大槻様。——そりゃあ、こんなに事を大きくすれば自尊心を傷つけられても仕方無い。

だけど——感情論だけで動く奴は大嫌い、根拠が何も無いのだから。



「……面白くないじゃない。ここまで掻き蒸してさ、ここであっさり大槻様を滅するのって。玖珂君——いや、《玖珂の若頭》は絶対に来ますよ」


じゃなければ面白くない。決して私は愉快犯とは言わないが、ここまでやっておいて簡単に終わってしまえば面白くない。


「貴方に紹介されたであろう玖珂君の二人の友人も来ますよ——今、全員で必死な顔してこちらに走って来ている」




(この女——千里眼でも持っているのか?)

あたかも見ているような口ぶりだ。その瞬間——菊花は酷く口許を歪め上げた。



「あっ、萩原君と穂積君が足止めくらっちゃったね〜」















「じゃっじゃーん!吸血鬼・ライアンと〜」

「——ホムンクルスのリチャード…」


萩原一行の目の前に西洋の妖怪が現れてしまったのだった。…井上穂積は酷く顔を歪めてしまった。



(……薄々予感はしていたんだけど、)


 
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