魑魅魍魎の菊
井上穂積は非常に混乱していた。…非ぬ方向への展開に導かないようにと。
突然の参戦者に誰にもが固まっていた。加藤は冷や汗をかき(幽霊だが)、龍星は無意識のうちに美鈴を守るようにして抱え直す。
「あれれー?この前の妖精使いじゃ〜ん?」
「——美鈴、こっちにおいで」
吸血鬼は王子のような笑顔で言い放つが、どこか影を含んだ笑みである。…そして全身黒ずくめのホムンクルス(人造人間)は鉄扇を出しながら、やや攻撃体勢に入っているのだ。
シルフの風のせいか…竹林のざわめきも強くなる。どこか心のざわめきすらも彷彿させるのだ。
「——テメェ等、何物だ。つーか、どっちの味方だ」
萩原君の鋭さを持った声が放たれると、二人は口許を酷く歪めてまるで狂ったような笑いをした。…壊れた玩具のように。どこか冷たさをも抱いていた。
「"味方"?俺達は——唯一無二の存在である高村菊花の"忠実なる下僕"」
その瞬間——ホムンクルスは一気に駆け出し、穂積に入り身をした!そして…鉄扇で腹に一発決められる!
「井上っ——!」
「余所見しない方がいいよー?
——僕、吸血鬼だから」
吸血鬼であるライアンは牙を剥き出しにし、爪を獣のように伸ばした!
だが、間一髪であるが龍星はそれを避け——たのだが、頬を引っ掻かれてしまったのだ。
「——…菊花は僕たちの"全て"であり、"罪"なんだよ」
ライアンは爪についた龍星の血を舐め、「…あんまり美味しくなぁ〜い」と呟いていた。