魑魅魍魎の菊


「……ゴホッ…ゲホッ!!」

「——大丈夫か井上、」


俺は美鈴を姫抱きしながら井上を持ち上げる……目の前に居る西洋のバケモノは完璧に壊れている。…何だかヤバそうな状況になっているのは俺でもわかるぞ。



(……畜生、これは圧倒的に不利な状況じゃねぇか)



「俺達はテメェ等に一切手出してねぇだろうが!!」

「えぇ——?でも、菊花の邪魔をする奴は——排除しなきゃ」

「……ここから先は何人たりとも行かせない」



邪魔、だと?あの地味女、一体何を考えてやがる——だが、この状況でヤり合うわけにはいかない。

美鈴を傷つけるわけにはいかねぇ——だが、いくら井上と戦っても高が知れてる。
かと言ってこの状況を打破する術なんてない。



(クソッ——)



「僕、たちは——玖珂くん、や…菊花…先輩の敵味方じゃない…」

「——コイツの言う通り、寧ろ中立の存在だ。俺達を倒しても、テメェ等にメリットなんざネェだろう…」



そうだ。俺達は井上の言う通り、玖珂や高村の敵や味方というわけでない。——そこまでして手を出される理由なんざネェだろう。







(刹那——)


ホムンクルスと吸血鬼が入り身をし、吸血鬼の蹴り技をなんとか足で受け止めた!

井上はホムンクルスの鉄扇に切り裂かれそうだったが、なんとか土の壁で塞いで——



「萩原君!美鈴ちゃんを空高く投げて!!!!」




非ぬ言葉に反論しようとしたが、この状況を打破しようと思い——苦渋の決断で美鈴を投げた!!



「シルフ!!美鈴ちゃんを菊花先輩の元へ!!!!」



見えざる風が美鈴を運んで行くのだ——


 
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