魑魅魍魎の菊
「——テメェ等"壊れている"んじゃねぇの」
萩原龍星は空手の構えをしながら、静かに唸る。だが、西洋の妖怪達は口許を歪め上げるのだがら薄気味悪い。
「ハンッ!!"人間"なんかに測られたくないんだけどー?
——人間風情も陰陽師も…」
吸血鬼は何やら血が入った試験管を取り出す。
水色の瞳にはただの冷たさしか浮かばない。
「俺等の主人の邪魔だけはさせない——どんな存在であろうとも、それは許されない」
ホムンクルスは鉄扇を構え、黒い瞳はただ闇夜を映すだけだった。
(——井上、これはマズい状況だぞ)
(——だけどどうにかして、菊花先輩の元へ)
二人がアイコンタクトをとると、穂積も精霊を呼び出す準備をするのだった。傷つくよりも辛いのは、目の前の状況を打破できずに自分を偽ることだ。
誰もが誰かを守りたいから強くなりたいと願うのかもしれない。だから——"戦い"が起こるんだ。
「【血の盟約】!!主人を咎めし罪を我が力に変えん!!」
「人間の禁忌を今——悪しき風に込めて!!」
「——"萩原 龍星"の名の下に、いざ能力(ちから)を解放せん!!」
「精霊師・井上穂積の名の下に、水の精霊ウンディーヌ!!」
——竹林の中で一戦が交わろうとしていたのだった——