魑魅魍魎の菊
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一人の青年は"亜空間"から抜け出し、大急ぎで境内を駆け巡っていた。——白い蛇と共に。
(——畜生、"あの人"なら知っているかもしれねぇ!)
「きゃぁああ〜!玖珂君だよ!」
「ちょっと!何なのよあの美形わ〜!」
「良い男〜!!」
——自分の容姿の良さが仇になって全くと言っていい程進めていないのは致し方ないことだと思う。
そして、懐に居る蛇が「——さすがです、玖珂の若頭」と言うが何が"さすが"だっつうんだ。
赤い提灯にお囃子、太鼓の音が心を弾ませるはずなのに今の俺には焦りの要素にしかならない。あの"地味女"を食い止めて、あの"神"を助けなければならないのだ。
(何処だっ!!!
——綾崎先輩!)
正影は唇を噛み締めながら懸命に探し続ける。……あの菊花のことだから綾崎先輩に何らかのことを漏らしているはずだ。
確かな確証が無い。だが、今それが最優先の"要因"なのであるのだ。他の玖珂の物は「魑魅魍魎の主」の元へ向かっている。何よりスザクや千影が居る時点でまず最悪の事態は避けれる——
避けれる——そんなはずなのに、どうしてこんなにも胸の中に虚無感しか広がらないのであろうか。
そして、あの地味女の「笑った顔」が頭の隅にちらくのか理解に苦しむしかなかった。
(——気の迷い、そう思うしかない)