魑魅魍魎の菊
「リチャード。菊花さん、どう反応したら良いかな?」
「さあな。鴉丸は忠誠心が凄いとしか解らない」
私の少し後ろで溜め息混じりに言うのは「ホムンクルスのリチャード」。因みに名付け親は私で第一印象が「王子様」という見事な不純理由。
「ウェールズ、サクソンも空から"玖珂の頭"を探して」
「えぇー?ご飯は菊花!!ねぇ、サクソン?」
赤い竜がウェールズで白い竜がサクソン。——どちらもイギリスや西洋で色々と言われている有名な竜なのだが、
(何か歴史がねじ曲げられているような気がする)
この説明は面倒なので、あとでまとめて一気にやるとしよう。
「そうだよー!ご飯、ご飯!」
「アンタ等、馬鹿の一つ覚えみたいに強請らないでよ!働かざるもの食うべからず!」
「「何それ?」」
「日本の諺だっつうの!ちゃんと仕事しないと、ご飯も無し!」
私がそう言うと、涙目になる二匹の竜は「菊花のバカ——!!」と叫びながら飛んで行った。
「…大変じゃな」
「蛇骨婆も暢気に笑ってないで…。そして何か優しい笑みを浮かべないで」
「良いじゃないか。わしには"悪者"は似合わんじゃろう」
優しく笑う蛇骨婆の蛇達も嬉しそうに笑っている。
空の月があまりにも明るくて、泣きそうになってしまった。私が生きている内にどれくらいのことができるんだろう?
"存在意義"を探す為に生きているなら、神とやらは私に何をさせたいんだろうね。
そして、小さく息を吐くのだ。