魑魅魍魎の菊
(——居たっ!)
「綾崎先輩!」
正影はかき氷の屋台の前に居た綾崎に向かって叫んだ。のだが、何故かそこには気に入らない「植木」が居た。
「あらっ…玖珂君じゃないの。どうしたの、そんなアオミドロみたいな顔して——」
「いくら先輩でもぶっ飛ばしますよ」
「きゃぁああ〜〜!美しさって罪〜」
突然の正影の登場により、植木は驚きながらも顔を歪めた。
「単刀直入に聞きます綾崎先輩。——"高村 菊花"のこの縁日前の奇妙な行動と言動について教えて下さい」
奇妙な温もりを持った空気が俺の周りを渦巻く。——俺は暴かなくてはならない、あの女のことを。
たった今、神の命を奪おうとする女を止めなくてはならない。これはエゴなのか?それとも——…
「なんで、お前にそんなことを言わなきゃいけねぇんだよ」
「俺はアンタに聞いた訳じゃない」
鋭く光る眼光。——アンタには関係無い、この俺でさえあの「闇」は食い止められない。
不幸になりそうな冷たさを帯びた陰気。それと狂気にも似た「殺気」……俺は西洋の妖怪のことはよく解らないが「魔王」——
そんな言葉がしっくりと来るんだ。「魑魅魍魎の主」よ、己は何を思って生きている。
(——何処からその存在が来た)
「——私は何も知らないよ。高村さんはここの神サマのお話ならしてくれたけれど」
さぁ、時よ今動き出すんだ。