魑魅魍魎の菊



「風の陣・烏の刃ぁあああ!!」


菊花の背中に生えているカラスの羽根が鋭い刃物に成り代わり、穂積達を狙うが——狙いのだが、間一髪で穂積が土の壁を作り上げるのだ。


だが、そんな余裕はなく——菊花はまたもや次の攻撃を仕掛けようとする。
カラスの羽根で一気に飛躍し、龍星に向かって炎の塊を投げつけたのだ。



「炎の陣・狐火!」

「舐めるなぁあああ!」


龍星は拳に霊力を集中させ、向かって来た火の塊を一気に消滅させたのだ!その反動を利用し、高くジャンプをして得意の空手技の蹴り技を一発腹の中に入れる!

そして、既に手などではなくなった刃物になった腕を掴み、顔面に強力な蹴りを捩じ込んだ!



「ぐはぁあああっ……!」



またもや地面に堕ちた菊花は鼻血を流し、口の中を切ったせいか口端から血が流れ落ちた。


「——美鈴を、」


龍星は菊花の前に仁王立ちした。瞳には憂いと怒りしかない。当の美鈴は鴉丸と一緒になって大槻に巻き付いている。

ぎゅうぎゅうに縛り上げ——体に鱗を刻む込むように。






「美鈴を返せ!!!」


「——ははっ…」


菊花は血だらけの腕を使い体を起こし、地面を軽く這いずった。
血で汚れた口許は他の物の怪の血と自分のものが混じって何が何だか解らないが、その口からは笑いが紡がれた。


「——何が、可笑しいんですか」

珍しく井上穂積の鋭い声が響いた。



「——美鈴はお前のじゃない。この先もずっと、ずっとずっと——美鈴は"私"のだ」

「お前の物でもねぇんだよ!!!!」


 
< 348 / 401 >

この作品をシェア

pagetop