魑魅魍魎の菊
その瞬間——
風が吹き、二人の髪を揺らすと。菊花の体から抜け出すように大槻の青い光がひらりと現れた。
そして、瑠璃丸の魂と共鳴するように光を強める。すると、そこには青い着物を纏った女神が現れたのだった。
(——もう、私は迷わない)
「瑠璃丸。今も貴方しか愛せない——」
そう涙を零しながら、不確かな姿のまま瑠璃丸に口づけをした。そこには確かに唇の柔らかさと日だまりのような温かさを感じた。
ふわりと香る竹の香り——
夏の涼しい風——
今、何百年という時を経て結ばれた"恋"。
歪みがあろうが、艶やかだろうが——それでも、二人は愛を深め、好きの意味を知り、愛を知り、やがて本当の意味で結ばれるであろう。
(——さて、終わったか)
抜け殻のようになった菊花の体は竹と木々の影に溶け込み、跡形も無く消えてしまったことを知るのは何時であろうか。