魑魅魍魎の菊
青い空の下で公園のブランコの上でアイスを頬張っている地味な容姿をした少女は制服姿で何を思うか。
そして左腕にはまたもや包帯が増えて、頬にも湿布を張っている。
(ん〜やっぱりアイスはクランキーに限る)
「美納様、ご協力ありがとうございました」
「いえ……"琅燕様"の勅命ならば、従います」
「そんな畏まらなくてもね…」
隣のブランコに座っているのは"消された"はずの縁結びの神『美納』である。艶やかな美しい長い髪は失われた。だが、すっきりとしたショートカットになっているのだ。
青い空の下。この公園には静寂が漂い過ぎているのだ。
「それに菊花殿も…何もそこまで満身創痍になるぐらいまでやらなくても」
「良いのよー。菊花さんは全知全能なの?それに仕事は常に全力でやらなくちゃ。生半可なことは許されない——」
そんな瞳を見た美納は小さく溜め息をついて、空を見上げた。
「…だったら美納様も同じことが言えるわよ。玖珂家と契約をしているのに……相当な危険が伴うような気がするんですけど」
「良いんですよ。何せよ、市太郎殿は"とある派閥"について知っていらっしゃる。これを利用すれば——
——菊花殿に"罪"をなすり付けれる」
にこりと笑うこの男があまり縁結びの神だと信じたくないのですけれどね。まあ良い、使える駒が現状維持をしてくれれば別に問題など無い。
「口合わせ——よろしく御願いしますね?」
菊花がにこりと笑った瞬間——彼女は影に溶け込むように消えて行ってしまったのだ。
黄色の爬虫類の瞳を光らせながら。