魑魅魍魎の菊
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薄暗く——太陽の光など差し込まない部屋に一人の男が玉座に鎮座していた。闇よりも濃く…気持ち悪いほどの黒い髪を持ち、瞳は紫水晶を埋め込んだような瞳をしていた。
口許は歪んだ笑みを浮かべ、男の太腿に体を預け…腰に腕を回す女の髪をただひたすら撫でていた。
まるで愛玩動物。——その女は蕩けるような眼差しで男を見つめる。
「——よくやったな」
男の声は低く甘美と艶を持っていた。そして、それを満足そうに笑う女はより男を抱きしめた。
「……見事に"前大槻"を蘇らした。我は嬉しい、お前は我の"唯一"」
「——御主人様の為なら、私は何でもします」
女は影を含んだ笑いを浮かべ、中華風の服を開けさせながら男に跨がった。
「——お前は前よりも"醜く"なってくれた。義影なんぞにくれてやるわけにはいかない。お前は我の物だ。お前さえ居てくれれば——
——我は"全て"を創り変えれる」
男は女の首筋に出来た傷を舌で嬲る。髪を掻き揚げ、香る柑橘系の匂いに興奮し——
男は復讐を誓い、紫色の瞳を光らす。
(——"菊花"は我の唯一。お前は醜くなればなるほど…)
(——貴方の色に染まる、の)
だけど、永遠の平行線になるのよ。
これが妄想、瞑想、空想だと誰が願ったのであろうか。