魑魅魍魎の菊







いつか"貴方"と結ばれると信じていたのに。そんなのは叶うはずなんてないのにね。







目の前で牙を剥く、狐の化け物の対処に困った。

木漏れ日と非常に似合わないわ。だけれど、黄金の毛皮が光に反射してとても綺麗。



「——千里眼か、全く厄介な狐め」

「儂は天狐だ、舐めるな小娘——やはり生きていたか」

私は麦わら帽子を取って、天狐の翡翠色の瞳を見つめた。


「げっ、私死んだことになっていたの?」

「茶化すな…。あの不自然な消え方、怪しいと睨んだ通りだ」


さすが1000年以上生きて、元神様だけはあるかもしれないね。


「今日は物の怪避けの術を掛けて来たのに、さすがに爪が甘かったか」

菊花は肩を竦めながら下りて来た途中の階段に腰掛けた。そして傍に菊の花束を置いて、小さく上を見上げる。


(……さてさて、面倒くさい展開になってきた)


「——何しに来た、」

「別に御墓参りに来ただけだし、それ以外に理由なんてあるわけ?」

「ふざけるな!!!……貴様、まだ"神狩り"のこと忘れたわけじゃねぇだろうな」

「なはずないじゃん。そっちこそ馬鹿じゃないの?」



私がそう言い放つと天狐は私に飛び乗り、鋭い爪で肩を押した。


「——馬鹿?私は貴方に何回も力を流されてもこうやってピンピンしている、もう効かない——」

「そんなはずはない——傷さえ残っていれば、効果はあったも同然」


この獣め。本当に人間にひれ伏したとは到底思えない。

思えないが、現に春菜さんにメロメロだしなあ……


 
< 369 / 401 >

この作品をシェア

pagetop