魑魅魍魎の菊
……井上と高村にそんな抜本的な繋がりがあったのかよ。抜本と言われるとそれはそうとも言えない。僕が従える「サラマンダー」「ウンディーネ」「シルフ」「ノーム」は四精霊と呼ばれている。これらはパラケルスス著「妖精の書」に書かれているんだ。
パラケルススって…あの"錬金術師"だよな。賢者の石を作り出したり、人造人間を造ったといわれ…
——ダンッ!!
龍星はテーブルを叩きつけてから立ち上がった。妙な寒気に襲われて、既視感に襲われそうになっていた。
「……井上。高村が前、この話をしていたが——それはそんなに重大なのか、」
「超重要事項なんだよ、哀しいことに」
「俺だって本で読んだことがあるが、人造人間は『ものの本性について』に書かれていたな」
「そう」
「だが、フラスコの中でしか生きられないと書いてあった。」
「それも一説だからね。実際に菊花先輩に居たホムンクルスは生きていた」
一気に血の気が引いた龍星。言いようのない虚無と恐怖。そうだこれは恐怖にも煮た寒気で既視感なのだ。
「ーーば、馬鹿言うなっ!!!パラケルスス以外に成功させた奴はいねぇし、実際に無理だろうそんなこと!!」
「だけど、出来てしまった」
現実はどうあれ、いるものはしょうがないんだよ。
(人の手はどうしてこんなにも哀しいのだろう)
穂積は自分の掌を見つめながら、そっと息を吐いた。