魑魅魍魎の菊
井上の言う言葉に俺は涙を流しそうになった。いや——何を考えたら良いかわからなかった。
「こうは考えられないかな。パラケルススが造った人造人間が誰かによって生かされ続けた」
(……あの女に出会ってから、どうしてこうも非現実的なことばかりが起こるのだろうか)
「あ"ぁ〜!!もう何聞いても驚かなくなった!!」
俺は金髪をかき回し、幾分落ち着いている井上を見つめた。
「お前さぁ…。初めて会った時より強くなったのか、落ち着いたのか、達観したのか、悟りを開いたのか訳わかんねぇよ…」
「うぅ〜ん…。僕も最近何が起こって驚かなくなったね、確かに」
「だよなぁ。——で、何で高村の存在がどうしてお前の命を脅かすのに繋がるんだ?」
意味解んねぇ。
どうしてこうも論理的にいかねぇんだろう。全て感情論が動いていて腑に落ちない。戸惑うまま、全てが流れていっているような気がする。
「ホムンクルスの造り方を知っている?萩原君」
「いんや」
「ホムンクルスは蒸留器に人間の精液を入れ、40日密閉し腐敗させると、透明で人間の形をした物質ではないものがあらわれるんだって」
「臭い半端ねぇな」
「だろうね」
穂積は小さく笑いながら、傍にあったメモに図を書き出した。
「それに毎日人間の血液を与え、馬の胎内と同等の温度で保温し40週間保存すると人間の子供ができるそうだ」
「……馬の胎内の下りから訳がわかんねぇ」
「だね。そんな方法で人間ができるだなんてね」