魑魅魍魎の菊


「但し、体は人間のそれに比するとずっと小さいらしい」

「そっから体格の良い男に成長するなんてオカシクねぇか?」



「それなんだよ…。フラスコの中でしか生きられないのに、どうして成長するのかが全く解らないんだよ」

「そうだぜ?毎日人間の血液を与えてって——分量によっちゃ、殺人でもしていたのか」

「そこまでは僕にも解らない。それに生まれながらにして、あらゆる知識が身に付いていたらしい」

「親が賢い人間だったらなるんじゃねぇ?妊娠中にモーツァルトを聴かすと良いみたいな」




(——で、それがどういう風に繋がるんだよ)




「それは……」


毎日与え続けていた血液がどうやら、僕の先祖にあたるらしい。


「っ——!!??」


僕だって菊花先輩に聴かされた時には死にたくなった。どうしてどうしてと頭の中に疑問符が巡りに巡った。

実際にホムンクルスがあの黒い瞳を光らせながら僕を見つめていた。



「結果、どうなるんだ」

「僕を殺したいらしい」

「随分直接的だな井上」

「彼は知識が多いが故に自分自身の存在に嫌悪感を抱いている。だけれど自分消えたくないという人間特有の欲望も渦巻いている」

「はっ…中2みたいなこと考えるのかよ」



龍星は眉間に皺を寄せた。



「だから抜本的に消せば良い。"血"があるからいけない、"血"さえなければ」

「理不尽な考えだ。俺だったら問答無用で殴っているところだ」

「——理屈が通用すると考えたら駄目だ」

井上の真剣な眼差しで答える。


 
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