魑魅魍魎の菊



「……正直、この血筋を持っているのは僕しか居ない」

「テメェのお袋さんは」

「母さんは……関係ない。純粋な血筋は父方なんだ」




今頃きっと二人は幸せな家庭を築いているに違いない。そんなことをぼんやりと考えながら穂積は時計を見た。現在、12時45分。

僕をここに閉じこめてから、僕は確かに二人の記憶を消したような気がする。もうあんまり昔の記憶だから覚えていないな。そんなことは今は関係ないか。




「あんま、こんな事言いたくねぇが。親父さんは?」

「……大丈夫だと思う。そんな命を狙われるほどの能力は父さんには無かった」

「——なんだが、話が読めたような気がする」

「そう?」











恐らく、パラケルススは研究の一環で四精霊を扱うことのできる人間を見つけてしまった。これはあくまで俺の推測だ。本当がどうかはわからない。

それが井上穂積の先祖だろう。井上の能力は俗に言う先祖返りだ。



その精霊の研究とホムンクルスの研究を結びつけようとしたのではないか?根拠などない、だけれどこれしかない気がする。



血というのは恐ろしい。そんな理由だけで殺す馬鹿は居ない。だが、馬鹿じゃなくて"いかれている"んだろうと思う。




(——こいつは、それでも生きている)




(意識を研ぎ澄ませて、全てを暴け、全てを包み込め、全てを救え、全てを壊せ)



震える体に叱咤した。

 
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