魑魅魍魎の菊
Rebolution
***
「はあ?」
「出掛けているんですか?」
萩原龍星と井上穂積は玖珂家を訪ねたが、不在だった。
現在、家に残っているのは小さな妖怪と美鈴を日々誑かしていた朱雀門の鬼の「スザク」だけ。
「今日は市太郎の奥方・麗子の命日だ。そんで家族総出で今日は墓参り」
残念だったな、スザクをそう告げながら気だるそうにあくびをした。
「で、正影に用があるんだろう?言伝があるなら…」
「……スザクさん、ありがとうございます」
「いや、良いんだよ」
龍星と穂積は目配らせをして、玖珂家を後にしようとした瞬間。
「……美鈴はまだ、見つからないのか」
呪いのような言葉に、今は誰も答えることができなかった。
奇妙な静寂さだけが、ここにいるものを包み込んだ。
「……見つけ出す」
「スザクさん、僕たちは玖珂君と菊花先輩を仲直りさせたいだけなんです」
その言葉に、スザクの口元が引きつった。…ほぼ、侮蔑の表情を浮かべながら。
「……俺だってな。信じてやりたいよ、あの娘を」
だけど、どうやって信じればいいんだ。
あんな惨状を巻き起こしながら、自分で処理もしないあの娘を。
闇ぐらい抱えているのは、俺だけじゃなくて他の物の怪だってわかっている。
わかっているさ。お前らなんかより、俺らは何百年何千年も存在しているんだ。