魑魅魍魎の菊



「…テメェ……」

「玖珂君」


正影の言葉を遮るように、菊花は大きな声ではっきりと名を呼んだ。
妙な緊張感があたりを包み、正影は声が出せなくなった。





「私は玖珂君を死なせたくない。生きて、生きて、他の人間も物の怪も救うことができるの」

「……菊花、何言ってるんだ。俺はそんな器はねぇ…」

「…生きるの。貴方は"殺されるべき"人間じゃないの」




その瞬間、術がかかっているはずの菊花が立ち上がり――




俺の胸に倒れてきた。









――背中に一本の矢を刺しながら。




「おいっ!!!!!」

何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!!


(気配がないだと?!)

半ばパニックになりながら、俺は菊花を抱えた。そして、懐から『鳳凰の小刀』を構え、気配を懸命に探る。



「……何故、親父が気づかないっ!」


千影や親父が気づけないほどのモノってなんだ!ここは、陰陽師一家玖珂家の墓だ!
それ相応の能力や菊花のような特異な存在はない限り踏み入ることも、術を使うこともできない。




(……おいおいおいおい、本当に面倒しか呼ばないなこの女!!)




「…死んだら、マジで地獄に落とすぞ菊花!」

俺以外の奴に傷つけられるのは、癪に障るんだよ馬鹿!


 
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