魑魅魍魎の菊
「高村菊花を倒すのはこの俺だ。…テメェみたいなクソ狐じゃねぇ」
「言ってくれるじゃん?」
福丸はまるで菊花のような侮蔑の表情を浮かべた。
「菊花は本当によく働く。僕達がしないような卑劣な仕事だって手を汚してくれる。足だって汚す。……どんどんどんどん醜くなれば、菊花はね、満足するんだよ」
「…どういうことだ」
爽やかな潮風が吹く、この風に乗せて式神が伝えてくれれば良い。この狐は何かがおかしい。
今まで滅してきた妖怪とは、全然違う。狐の妖怪はうちには、沢山いる。沢山いるが、何故……こんなにも気味が悪いのだ。
本来ならば、狐は俺達側の妖怪。……しかし、こいつは菊花のような奇妙な殺気を放っている。
「菊花は可哀想な"生き物"。…"生き物"、というよりかは"具現化"だよ」
あぁ、なんて情けない顔をするんだい玖珂の若頭。
僕の大好きな麗子様と同じ顔をするのに、凛々しくなんてない。
あぁ、麗子様に会いたい。けれど、麗子様はあの忌々しい陰陽師と一緒にいる。
殺したいなー、噛み砕きたいなー。
だけど、ただ倒すのは面白くない。
だって、最高に怒らして、惨めな死に方させなきゃ気がすまない。
麗子様、待っていて。こいつを片付けて、あなたの元に向かうよ。
(……気に入らない、)
「具現化…だと?」
「それ以上は喋れない。喋ってしまったら、君は自分の存在を疑うからね」
にんまりと狐が笑った瞬間、その手から弓が放たれた。