魑魅魍魎の菊
「我、光を統べる者"玖珂正影"!今こそ、《不死鳥》の力を解放せよ!」
正影はそう叫ぶと、亜空間から炎を帯びた《不死鳥》が飛び出した。そして、矢を薙ぎ払い距離をとった。
菊花の体はぐったりとし、白いワンピースには血が広がるだけであった。
正影は術を施し、菊花の周りにバリアを作った。
「考えたね。物の怪を寄せ付けない術か」
「俺はそこら辺の陰陽師じゃない。……次期玖珂家当主だ」
「そうやって奢り高ぶっていられるのも今のうちだよ」
「テメェこそ、馬鹿だな。ここは玖珂一族の墓地だ……怒りに触れてみろ、じきに我が組の物の怪が集結する」
狐は笑いながら、弓矢を刀に変容させた。楽しそうに笑う。しかし、その笑いはどこか歪んでいた。
「玖珂の若頭。君は頭は良いけれど、物事が分かっちゃいない。
菊花はどうして百鬼夜行を起こしていたか知っている?
菊花はどうして奇妙な復活を遂げるのか知っている?
菊花はどうして地獄に堕ちなかったか、本当に知っている?」
走馬灯のように記憶が駆け巡る。あの時、どうして地獄へ堕ちなかったのか。
あの赤い札は確実に……地獄へと堕ちる、そう閻魔大王を契約を交わした。
「……まさか――っ!!!!!!」