魑魅魍魎の菊



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萩原龍星と井上穂積はとある古びたアパートにやってきた。
築40年を軽く越え、あまり人が住んでいるとは思えないような住居であった。

裏路地に面しているせいか何処か陰湿で、トタンも錆だらけである。



「……井上、本当にここが高村の家か?」

「うん。……今、いると良いけど」

「居るのは一向に構わないが、あの物の物の怪達も一緒に住んでいるのか?」



龍星がそう尋ねるが、穂積は神妙そうな顔をし首を傾げた。どうやら穂積もわからないようである。



「前、髪の毛をやってもらった時は……ホムンクルスのリチャードさんなら居たけど…」

「あのいけ好かない男か」



二人はそんなことを話ながらアパートの階段を上っていく。



「本当に……誰も住んでいないみたいな感じだな。生活感が感じられない」

「それは思うよ萩原君。僕だってここの人に会ったことないんだ」



そして、「203・高村」と書かれた表札を確認した龍星はインターホンを押した。












「…んっ?」

ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン



「ちょっと、萩原君?!」

「あ"ぁ?出ねぇのが悪いんだよ」


しかし、誰も出てこない。不審に思った龍星はドアを回した。






「……えっ?」

穂積の不安気な声だけが響いた。



「…ほぉ。これは面白い展開になってきた」

中は蛻の殻であった。

 
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