魑魅魍魎の菊
『……菊花先輩、僕にこんな明るい色…似合いますか?』
『似合うに決まっているでしょう!私を信じなさーい!私は自分プロデュースできなくても、他人には出来るんだからね♪』
『じ、自虐ですか?』
『あれれー?お姉さん視界が霞んでいるなー』
優しい優しい菊花先輩。
温かい菊花先輩。
どうして貴方の瞳の奥は怯えているんですか?
幼い頃の僕の瞳と一緒だ。
自分の能力を持て余し、いつ誰を傷つけるかわからない状況に怯えていた。
こんな大きな能力、僕はいらなかった。
そうでなかれば、見たくもないものも見なくてもすんだ。
傷つけたくもないものも傷つけなくてもすんだ。
(…守る力にさえ、ならなかった)
『……先輩。ここには、"誰が"住んでいるのですか?』
見えてしまったんだ。そのときの菊花先輩の……
心底、おかしそうな顔をしたのを。
(背筋しか凍らなかった)