魑魅魍魎の菊
と、その瞬間だった。人間の男の姿をした奴がこちらに入り身しながら何やら鋭い武器を突き出してきたが、儂は神影を背に乗せ避けるのだ。
「ねぇ、もう一度聞くんだけど。——菊花は何処?」
「さぁな。それより、貴様は何者だ。見た事のない妖怪だ」
どうやら武器は鉄扇——隠密に人間を殺す武器だと正影に聞いた事がある。だが儂は残念ながら神の力を持ち、且つ「天狐」なのだ。
普通の妖怪が儂に叶うはずがない。
千影の四つの尻尾が揺れ、遠くまで見透かす。
「俺は妖怪でも神でもない」
その男は自嘲にも似た笑みを零し、
「まして人間でもない」
この集団の持つ意味が解らないのは正影もきっと同じだろう。
「俺は人間の禁忌より生まれた——ホムンクルス」
その瞬間、「百鬼夜行」からは増幅した"陰"の力が放出された。——この感じ、この感覚——
まさか、
この計画はどうやら、欠点があったらしい。
「神影、どうやらこれは一波乱では終わらないぞ…」