魑魅魍魎の菊
「…チッ。意志を持った刀、なんて厄介な…」
軽く舌打ちをする菊花に俺はどうしてこんなに情けないんだと思うのだ。あの女を早く滅さなければ…
「私の妖術も限界が来てるようね、」
「グッ…て、テメェ……"人間"か?夕方会った時と違う、」
「別に一緒だけど?でもまあ、平たく言えばアンタは陰陽師で私は《妖術師》。そこまで精通していないけど、力を増幅させるぐらいの能力は持ち合わせている」
(よ、妖術師だと?!)
まだこの現代に居たのか…。小さく舌打ちをした瞬間だった、視界の端に"白い塊"が見えたのだ。
「えっ——……白、」
「きょ……う、こを…離せ、下衆女…め!!!」
何とそこには、力を無理矢理増幅させ巨大化した狐の姿があった。
千影よりかは小さいが妖力が増している。だが、こんなに無理矢理に力を大きくしてしまったら自滅をしてしまう——!
「止めるんだ白!!!」
(神の力を持つ、)
(光の持ち主…)
「……成る程、君は善の神っ…。厄介なこと、してくれるわね…」
菊花は刀を構えて、一歩後ろに下がった瞬間!白狐が唸りながらこちらに飛びかかって来た!
(ダメだ、神の力…!)
刀で腹を斬りつけると、こっちに入り身をしながら前足を私の肩に掛けて——
「し、白ちゃん!!!!」
「白ォォォ!!!!」
「あ"ぁぁぁぁぁ!!!」
——肩を食いちぎられそうな勢いで噛まれた。牙が奥底に突き刺さって、血液が取り留めなくドクドクと流れ出すのが解る。