魑魅魍魎の菊



「おや、正影。帰って来たの?」



「神影。——屋敷が半壊している、一体どういうことだ?!」

「キャアァァ——!!!若、神影様のお着物に着火なさらないで下さい——!」



家に帰れば半壊していた。



絶句以外何が出る?





そりゃ、怒りだ。





我が家は古いが広い日本家屋である。そんな家が半壊しているなど、そんな可笑しな話などない。


そして、玄関で飄々と煙管を吸っていたのは着物の付喪神・神影。
世の男が虜になるような艶かしい姿をしているが、俺にとったらただの露出狂だ。



「お前が居ながら何故我が家は半壊してるんだ?!」

「ちょっと正影、怒らないでくれぬか?妾は無駄な労働は嫌いじゃ」



コイツは以前、何処かの姫君に大切に扱われていた着物で性格は現代でいうツンデレで口調は姫(?)っぽいのだ。



「このクソアマ…」

「若!」

「口を慎め正影。千影は心の狭き男じゃ、嫉妬に狂ってその内身を滅ぼす」

「おめーより出来た妖怪だっつうの」

「妾は付喪神じゃ!断じて妖怪などではない!」


なんか面倒臭ェ…。俺、本当にここの家に住人であろうかと悩む日々が続く。


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