魑魅魍魎の菊
鏡子は元に戻った白に介抱されながら正影と菊花を見つめていた。
「鏡子……大丈夫か?」
「し、白ちゃんこそ……お腹が、口だって…!」
白の腹からは血が溢れ出し、口元はあの女の血がこびり付いているのだ。千影が居れば、白ちゃんの怪我ば治るのに!
鏡子は泣きながら「ゴメンね」と叫びながら必死に着物で白の血を拭い取る。
あんな女の血なんてつけないで…!
あんな女のせいで滅されないでよ!
「俺っ……鏡子、守れた?」
(弱いけど、俺…。頑張った、)
「…う、うん…!格好良かったよ白ちゃん!!だ、だからもう喋ったダメだよ…」
鏡子は必死に念じた。誰か、早くこっちに来て白ちゃんを治して…!
早く助けて、誰かと。鏡子の髪を撫でながら白はフッと笑うのだ。
「い、や…だよ…白ちゃんっ…」
「笑えよ、鏡子…。若殿を、見ててやれ……」
あの人は"家族"の為に、俺達の為に戦ってくれている。
無理矢理力を増幅させたから、意識が遠のいて行く——泣くなよ、鏡子。俺は笑った鏡子の顔が好きなんだ。
チカチカとする視界の中で《百鬼夜行の頭》の表情が何処か苦しげに見えたのは気の迷いだと思いたい。
若殿がきっと倒してくださる——地獄に咲く、力強い一輪の花のように。
揺らめくそのお姿にまたもや惚れそうになる。