魑魅魍魎の菊


その百鬼夜行は徘徊で通る道の先々で付喪神や妖怪達を滅するという、質の悪い集団だ。


俺は実際見た事はないが…凶悪な妖怪を大勢引き連れているという目撃情報がある。

最近、夜も寝ずに俺もパトロールをしていたが中々見つからなかったのだ。
式神を放っていたのにも関わらず見つからないということは、かなり高等で知能が高い妖怪ということが解る。



その頭は——もしかしたら、妖怪に成り下がった神かもしれない。荒ぶれた神なら、それはそれでちゃんとした実力や作戦が無いと滅せれないのだ。




「千影、よくやっ——」



「そんな事より、お春がァァ!!儂の愛しいお春が男と歩いていた——!」

「"そんな事"だと?!」

「そうだ!お春に見つからないように徘徊していたら、お春が優しげに笑い他の男と歩いていたんだぞ?!呪い殺してやる、あの男——」

「ただのストーカーだろおめー?!んな事してみろ、春姉哀しんでお前と絶交するぞ」

「ぜっ——?!」



俺がそう言えば、ピタリと止めて大人しくなった。

この妖怪は何故か人間の——我が姉を恋愛対象として見ており、真剣に娶ろうと考えているらしい。


俺としては妖怪が義兄なんて嫌だし、こんな心の狭い奴は無理だ。…それに姉は姉で千影のアプローチをただ戯れているだけだと勘違いしているという、逆に寛大(天然)な人だ。



二人の末路を心配するのは、我が家に入り浸る「目に見えないもの」と家族だけだ。



そして、大人しくなった千影は元のサイズ——大型犬ぐらいの大きさになったのを見計らって、俺は首根っこ掴んで家の中に放り込んだ。

それと同時に俺は式神を放って、半壊した屋敷を修繕させた。



(あの狐——いつか俺が闇に葬ってやる!)


 


< 8 / 401 >

この作品をシェア

pagetop