魑魅魍魎の菊
「高村——植ちゃんは罪な男だな…」
「そうだね刑部君…。それに比べ刑部君ったら…」
私は横にやってきた刑部君を軽く見つめた。
「何その可哀想なものを見るような目は!!止めろ高村!俺は平和に過ごしたい男なんだコノヤロ——!!」
とまぁ…冗談はそこまでにしてだ。どうやら刑部君は作業を終えて、片付けをしている最中らしい。
「にしても植ちゃんは凄ェな、勉強出来るし、モテるし、野球できるしよ…」
「嫉妬?」
「しちゃうぜ俺だって?見てみろ、この俺の普通加減を!!」
「自慢する事ないと思うけど…」
「グっ……ふ、深く傷ついたぜっ…」
現在植木君は多くの女子と男子に囲まれながら「ピーマンは嫌いだ」と豪語している。いや…豪語するほどでもないと思うんですが。
「でも、そんなこと言ったら私の地味加減はどうなるの?!いつも植木君の光に揉み消されているんだから!それに比べたら刑部君も野球出来るし、明るし、私みたいに運命のルーレット回し過ぎてないし!」
「わ、悪かった…。お前地味だもんな」
「改めて面と向かって言うこと?!」
アレ、何かまた心に傷がついたような気がするぜジェイソン。そして刑部君もそんな哀愁を帯びた目で私を見ないで下さい。立ち直れません。
そんなこんなで調理実習が終了すると、私は植木君と刑部君と一緒に自販機の所へ向かったのだ。
(見舞いで奢ってくれるらしいし…)