魑魅魍魎の菊
台所に行けば我が姉の「春菜」が精のつく料理を作っていた。それを手伝う鏡子と他の狐達。
それと——悉く姉の邪魔をしている千影が居た。
正影は冷ややかな視線を千影に向けるが、こんな状況は今に始まったことじゃないと勝手に割り切ったのだった。
「テメェ…何春姉の邪魔してるんだコノヤロー」
「離せ正影!儂はお春から離れたくない!どういう了見で儂とお春を引き離そうとしているんだ!」
「俺は身内だっつうの。了見も何もネェよこの変態狐」
俺は大型犬サイズになっている千影の首根っこ掴んで春姉から引き離す。姉は姉は苦笑しながら野菜を切っている。
「正くんったら…。私は大丈夫なのに」
「春姉もこの狐にビシっと言わないとしつこいぞ?」
「フフッ、お父さんと一緒で心配性なんだから」
いや親父はただの娘を溺愛しているだけかと…と俺の心のツッコミを言えば、話がややこしくなるのは目に見えているのであえて口にしない。
「それで若、先ほど誰か訪ねてきたのですか?」
「あ"ぁ?…気にすんな、対した奴じゃない」
俺は食器棚から小皿を取り出し、紙袋の中に入っていたフルーツの詰め合わせを冷蔵庫の中に仕舞う。
「ん?お客さんからの貰い物?」
「そうだよ、だから春姉も好きなときに食べて」
姉にそう言いながら、正影は紙袋を持って家の中を歩き出した。
(……ったく、あの女なんなんだよ)
廊下でぶつかった時のことを思い出したの。…あまりにも普通の女子高生だったから驚いた…
普通というより…地味だったが。周りに居た女友達の方が可愛かったぞアレは。