魑魅魍魎の菊
ていうか、同い年と思ったら……一つ上だったのかよ、ぶつかった時見たスリッパの色が「青」だったから肝が思わず冷えた。
(俺はあんな女が"先輩"だなんて、絶対に認めネェし)
「白、入るぞ」
「…どうぞ若殿」
とある和室の中には白が布団の中で横になっていた。千影曰く、三日程安静にしていれば治るそうだ。
「どうなされたんですか?」
「まぁまぁ起きなくても良い。ちょっくら見舞いの品を貰ったんだ」
起き上がろうとする白を制し、俺は横で胡座になるのだ。そして、紙袋から貰った稲荷鮨を小皿に乗せ、茶とともに渡した。
「…ありがとうございます若殿。これは誰から?」
「まずは食え、話はそれからだ」
(…あの"地味女"、今度会ったら借りを返してもらうぞ)
とにかく…白が稲荷鮨を食べているのを見届け、俺も備え付けのポットから茶を出し一服する。
畳の香りがとても心地よくて、あぁやっぱり家が一番だと何ともインドアな発言をしてしまうが、俺はあくまでもアウトドア派だ。
「調子はどうだ?」
「…あの《夜行》という鬼からもらった薬のお陰でほとんど傷は塞がっています」
「……それは良かったな」
正影は柔らかく笑いながら、白の頭を撫でて上げた。もし、またあの夜行という鬼に会ったら礼を言いたいものだ。
「それで、若殿…。あの後、あの"女"はどうなりましたか?」
白の灰色の瞳が鋭く光る。