魑魅魍魎の菊
スザクの容態は妖力が削られ、何かで縛られたような痕もつけられた。回復もそう時間がからないらしいしな。
何はともあれ生きていればそれで良い。
「で……《高村 菊花》という女子はどうなった」
スザクは茶を飲みながら天井を仰ぐ。
「…他言無用だぞスザク」
「解っている…。俺だってあの女子がただ者ではないことは解るぞ」
「…妖力が増幅した白によって左肩を食いちぎられそうになり、俺が左頬を一発殴っただけだ」
「"だけ"じゃないだろう…。物の怪ならともかく、人間なら重傷だろう」
「まあ…同じ学校の生徒みたいで、今日学校で実際に会った」
「何だと?!」
叫んで腹部を押さえるスザクに呆れながら息を吐いた。驚いているなら休んでいろよ馬鹿。
「いや…いきなり叫んで悪い。…同じ学校の生徒だったのか、」
「怪我は重傷みたいだな。本当は入院一ヶ月は下らない」
「………そうなのか、」
先ほどウチに訪ねて来た時、せめて…
せめて、膝の手当だけでもすれば良かったのであろうか。
「正影、辛気くさい顔をするな」
「……別にしてねぇし」
(出会えたことに"意味"は持つのであろうか?)
襖の外からは元気に遊ぶ小鬼と狐達の声が聞こえる。
「正影よ、俺達は永い時を生きている。だが、人間はそれに比べて命は短い、その中でどのような屈強にも堪え抜き、乗り越える不思議な力を人間は持っている。短い時の中で出会いを大切にし、素直になることも大切だと思うぞ」
スザクの声が部屋に響き渡る。清らかな音と声、それは何を示唆するのか解らない。
俺は小さく息を吐きながら退室したのだった。