魑魅魍魎の菊






物の怪の多くが回復したところで、晩の席に見知らぬモノが居たのだった。



「——誰だそいつ」

「あっ、正ちゃん。この人は《加藤さん》と仰るみたいで…お仕事の依頼みたいよ?」



我が姉を気色悪い目で見ている辺り、かなり遠くで千影が牙を剥いているのが解る。…こういう妙な所で千里眼を使うなバカ。



「却下だ。俺はそんな女のケツばっか追いかけているような《霊》は相手にしねぇ」

「失礼な!!雛ちゃんの場合は違うぞ?!」




そうこの…いかにもオタクのような容姿をした奴は——告られた先輩の背後に居た霊だ。なんつーか面倒な予感がする。



「だったら春姉のなら良いのかよ?!変な目で姉貴を見んな!」

「そんな私なんて貧相な体に顔だから、勘違いよ〜」


(少しは自覚しろよ!!)



身内の欲目なのか、我が姉「春菜」は美少女という言葉がピッタリ合う可愛らしい女性なのだが…


超絶な天然だ。様々な男性のアプローチを平気な笑顔で返す辺り、相当最強な人物だと思う。



別にシスコンではないが…姉の末路を心配する日々だ。身内にストーカーを繰り出す男もいれば、平気で変態な霊を我が家の中に入れたりするからな……




「……成仏目的なら他当たれ、今腹の虫の居所が悪いんだ」

「ちょっ?!君、陰陽師なんだろう?!少しは協力してくれても良いじゃないか!!」

「あ"ぁ?!馬鹿言うンじゃねぇよコノヤロー。俺はそんなナリした奴が大嫌いなんだよ」

「差別?!お願いだから依頼内容ぐらいは聞いてから判断しようよ!!」



年齢は恐らく20代半ばぐらいで、何かこの世に思い残すことがあったのであろうか。

全うな理由ならば承諾してやっても良い。さすがに差別はマズいからな。







「雛ちゃんとの縁結びが願いだ!」









——ピキッ——


青筋が立つのを覚え、俺は腹から声を出した。








「誰か塩持って来い!!!!!!」


 
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