魑魅魍魎の菊
*
物の怪の多くが回復したところで、晩の席に見知らぬモノが居たのだった。
「——誰だそいつ」
「あっ、正ちゃん。この人は《加藤さん》と仰るみたいで…お仕事の依頼みたいよ?」
我が姉を気色悪い目で見ている辺り、かなり遠くで千影が牙を剥いているのが解る。…こういう妙な所で千里眼を使うなバカ。
「却下だ。俺はそんな女のケツばっか追いかけているような《霊》は相手にしねぇ」
「失礼な!!雛ちゃんの場合は違うぞ?!」
そうこの…いかにもオタクのような容姿をした奴は——告られた先輩の背後に居た霊だ。なんつーか面倒な予感がする。
「だったら春姉のなら良いのかよ?!変な目で姉貴を見んな!」
「そんな私なんて貧相な体に顔だから、勘違いよ〜」
(少しは自覚しろよ!!)
身内の欲目なのか、我が姉「春菜」は美少女という言葉がピッタリ合う可愛らしい女性なのだが…
超絶な天然だ。様々な男性のアプローチを平気な笑顔で返す辺り、相当最強な人物だと思う。
別にシスコンではないが…姉の末路を心配する日々だ。身内にストーカーを繰り出す男もいれば、平気で変態な霊を我が家の中に入れたりするからな……
「……成仏目的なら他当たれ、今腹の虫の居所が悪いんだ」
「ちょっ?!君、陰陽師なんだろう?!少しは協力してくれても良いじゃないか!!」
「あ"ぁ?!馬鹿言うンじゃねぇよコノヤロー。俺はそんなナリした奴が大嫌いなんだよ」
「差別?!お願いだから依頼内容ぐらいは聞いてから判断しようよ!!」
年齢は恐らく20代半ばぐらいで、何かこの世に思い残すことがあったのであろうか。
全うな理由ならば承諾してやっても良い。さすがに差別はマズいからな。
「雛ちゃんとの縁結びが願いだ!」
——ピキッ——
青筋が立つのを覚え、俺は腹から声を出した。
「誰か塩持って来い!!!!!!」