魑魅魍魎の菊
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「馬鹿だね菊花」
玖珂家の傍の喫茶店で紅茶を飲んでいたのは、「ホムンクルス・リチャード」だった。溜め息を吐く姿も麗しいデス…。
「…結界張れるくせに、どうして生身で敵の本拠地に行こうとするわけ?理解に苦しむ」
「別に玖珂君は"敵"じゃないよ」
「"玖珂君"——?」
私の言葉に眉を潜めるリチャード。…出会った頃より幾分表情が豊かになってくれたから良かった。
「同じ学校の後輩だったの。もし外で会った時に変な呼び名だと、周りの人に不可解だと思われる」
そう告げてから私は「早く家に帰るわよ」とリチャードを促したのだ。…そして財布の中身を見れば凄い金欠という現状に頭を痛める。
(はぁ……やっち早く振り込んでよ)
「…ていうか菊花、怪我大丈夫なわけ?」
「大丈夫なわけないよ…。本気でHP瀕死状態で学校でちゃんと授業を受けれていたのが奇跡」
貧血で倒れると思っていたし、微かに熱を持っているからマジで死ぬし。ここでアレだよ回復魔法とか使いたいところだけど、生憎そんな魔法少女みたいなことできないんで。
「ありがとうねリチャード。…いなり寿司買って来てくれて」
「別に。……それより早く帰ってドラマの再放送見よう」
そうやって自然に私の荷物を持ってくれるから紳士なのよね…。これだから英国育ちは。
私は苦笑しながらリチャードと一緒に家路を辿ったのだった。