魑魅魍魎の菊






「馬鹿だね菊花」


玖珂家の傍の喫茶店で紅茶を飲んでいたのは、「ホムンクルス・リチャード」だった。溜め息を吐く姿も麗しいデス…。


「…結界張れるくせに、どうして生身で敵の本拠地に行こうとするわけ?理解に苦しむ」

「別に玖珂君は"敵"じゃないよ」


「"玖珂君"——?」



私の言葉に眉を潜めるリチャード。…出会った頃より幾分表情が豊かになってくれたから良かった。



「同じ学校の後輩だったの。もし外で会った時に変な呼び名だと、周りの人に不可解だと思われる」



そう告げてから私は「早く家に帰るわよ」とリチャードを促したのだ。…そして財布の中身を見れば凄い金欠という現状に頭を痛める。



(はぁ……やっち早く振り込んでよ)



「…ていうか菊花、怪我大丈夫なわけ?」

「大丈夫なわけないよ…。本気でHP瀕死状態で学校でちゃんと授業を受けれていたのが奇跡」



貧血で倒れると思っていたし、微かに熱を持っているからマジで死ぬし。ここでアレだよ回復魔法とか使いたいところだけど、生憎そんな魔法少女みたいなことできないんで。



「ありがとうねリチャード。…いなり寿司買って来てくれて」

「別に。……それより早く帰ってドラマの再放送見よう」



そうやって自然に私の荷物を持ってくれるから紳士なのよね…。これだから英国育ちは。

私は苦笑しながらリチャードと一緒に家路を辿ったのだった。


 

< 90 / 401 >

この作品をシェア

pagetop