魑魅魍魎の菊
「ねぇねぇ正ちゃん!!現代に陰陽師って居るのかな〜?居て欲しいな〜♪だったら、あたしね弟子入りとか頼んじゃう!」
「…うっさい由衣、黙ってろ」
「ちょっと…こんなに可愛い幼なじみが居るだなんて羨ましいね!!玖珂っち!」
俺は射殺出来るともいえる眼光で浮遊している"ソレ"を睨んだ。幼なじみの声にもイラつくが——
「怒らないでよ正ちゃん?!あたし、別に変なこと言ってないし!」
「——とにかく静かにしてくれ。夜、ほとんど寝てねぇんだよ…」
「そうなの玖珂っち?!」
俺は思わずあの浮遊している《加藤》とやらに塩を打ちまけたい衝動に駆られたが、生憎ここは教室だ。
……昨晩から俺にまとわりつき、寝室でもギャーギャー喋っているコイツは挙げ句の果て学校にまで来やがった。
(……授業後になったら成仏させてやる、)
学ランの中になる数珠を思わず握りしめた瞬間だった。そして、奴は姉どころか我が幼なじみにも変な目で見ている。
「…由衣ちゃんか〜可愛いな〜。ちょっと発育途中な感じが良いね玖珂っち!!」
「黙れ!!由衣をそんな汚い目で見るな下衆!そして俺を"玖珂っち"って呼ぶな気色悪い!!」
時を経て授業後になり、俺は思い切り教室のど真ん中で叫んだ。イライラは募るし、コイツは人間の女全員を変な目で見ているのか。
……ていうか女の敵としか思えないのは俺だけか?
いやはや…あの"雛先輩"とやらも可哀想だ。あんな男が背後にいると思うと虫酸が走る。
「成仏専門なら良い所を紹介してやるから、金輪際俺の目の前に姿を現すな」
「何で"金輪際"を強調するの?!俺は別のことを依頼しているって、昨日の夜から言っているだろう?!」
「あ"ぁ?帰れ帰れ」