魑魅魍魎の菊
「…へぇ…妖術ってこんなことも出来るのか」
「深く関心しないで。元々は人間を害するための術なんだから。でも、使い方を変えれば幽霊だってオシャレになるの」
菊花は数珠を鞄の中に仕舞いながら、加藤を見上げる。
「た、高村さんアリガトウ!!最初は怖がったりしたりしてゴメンね!」
「良いですよそんなの。いきなり"魑魅魍魎の主"だなんて言われたら、誰だって怖がるので」
ふむふむ、中々好青年な感じになったじゃないのよー。
さすが私、ビバ菊花!自分をプロデュースできなくても、良いじゃん?
アレ…言っていて、物凄く悲しくなってきたんですけど。
「って…もうこんな時間だ」
「あれ…高村さん帰るの?」
「どうせドラマだろうが、暇人」
「どうして解ったのよ玖珂君?!」
私は口元を押さえながら玖珂君を見つめる。
「って…おめー、初対面で俺にドラマの再放送があるんで帰りますとか抜かしてただろう?」
「あっ、そういえばそうだったね…。でも、今日は本気の本気で用事があるから帰るわ」
まっ、加藤さんのことは玖珂君に任せておこう。きっとなんとかなる——はずだ。
「それじゃあ、アデゥー!」
「ちょ、待て高村!!!!」
あ、あの馬鹿——全力疾走で走ったら傷に触るだろうが!そして、あんな膝で無理に走ったら傷もひら…
(何で、俺がアイツを心配しなくちゃならんのだ)
「あーあ、高村さん帰っちゃったよ玖珂っち?」
「…チッ、アイツの家におめーを押し付けようと思ったのに」
「酷っ!!玖珂っちあんまりだよー!!」