甘い香り
「でも…そんな…あたしは、アスターと結婚するわけでもないのに」
「確かにそうなんだけどね」
そう言って、目を瞑って口だけ笑う。
アスターに、聞かなきゃ。
真実を…
―――――
「本当に…邪魔な女ね」
端整な顔が歪む。
私だけの、愛しい人だったのに…
もう少しで、私だけのモノになるところだったのに。
あの小娘…ッ。
―ダンッ
握った拳が壁を叩く。
「絶対に許さないわ…」
あの艶やかな黒髪も
サファイアのような瞳も
白くきめ細かい肌も
長く細い指も
全て全て、私のモノ。