甘い香り
――それだけのはずがない。
確かにマミは魅力的な女性だが、城にまで噂が行くとは思っていなかった。
何か裏があるはず、そう思って同じサファイアの瞳を睨み付けた。
「お前が執心する女性だとは聞いていたが…あの心根。
揺るがないあの瞳、そして何より――」
つり上がった口許に、眉間にしわが寄った。
彼女の内面を気に入ったのならば問題ない。
いつか親族になるのだから。
しかし、この様子では――
――…気付かれたか。
「――あの香り、よく見付けたものだ」
花の世話をさせて匂いを誤魔化すつもりだったが、内からの香りは覆せなかったか。
唇を強く噛み締める。
「実に面白い…私を楽しませてくれよ」
そう言って去っていく背中をいつまでも睨み付けた。
横に立つ女を忘れ…
ただ、少女を想った。