甘い香り
無理に笑っても、暗がりのせいで顔は見えない。
ゆったり歩き出す友だちの背中を眺めてから、自分も歩き出した。
―桜木 真実
普通の高校生。
ただ特別なことと言えば、両親がいないこと。
ただ、それだけだった。
「あーあ…」
結局自分が帰るところはあの家しかない。
嫌でも見せつけられる現実に舌打ちをした。
――思い詰めないように、とか…
ムリに決まってんじゃん。
ため息をついて、ポケットの中の棒付きアメを取り出した。