鴉《短》
「人間はね、愛するため、愛されるために生まれてくるんだよ」
幼い頃の私は誰かが囁いたその言葉を信じ、それから、家族とは、友人とはどうあるべきかを学校で教え込まれた。
共通するのは
愛だとか絆だとか
そんなものばかりで。
それがただ尊く、人のあるべき姿だと
言っていたのは…母も、同じだった。
母はよく、虐待を受けている子供のドキュメント番組を見ては涙を流していた。
可哀相に、と。
彼らに罪は無いのに、と。
「理不尽な理由で子供に手を上げる親は最低ね」
口癖のように、そう言っていた。
……じゃあこれは、何なのだろう。
そう思うけれど、母が殴る理由を知っている私は、それについて本人には何も言えないのだ。
母は何故、私を殴るのか。
それはきっと、父が理由だ。