鴉《短》
鍵を差しこみ扉を開けると
暗闇の向こうから
私の顔面目掛けて何かが飛んできた。
予想はしていたけれど
見えていたけれど、避けずに、わざと当る。
頬骨にごつん、と重い痛みが生まれた。
落ちたそれを拾い上げてみてみると
…受話器、だった。
痛さで歪んだ表情を閉じ込めて
目線を上げる。
深い闇の中
ぎらぎらと光る
野獣の眼が、ふたつ。
うっすらと笑みを浮かべたその人が
ゆったりとした足取りで
こちらに向かってくる。
私はそれをただ
心に鍵をかけ、見ていた。
今日もまた
……宴が、始まる。
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