鴉《短》
自分の家のドアの前に立ち、息を吐いて、ドアノブに手を置く。
一日の終わりと、始まり。
この瞬間、私は人形になる。
決して何があっても動じないように。
どんな痛みにも顔をゆがめないように。
力をこめて開ける。
…そこは、静かだった。
電気がついており、視線を下げてみると革靴が目に入る。
そこで、ほっと息を吐いた。
一日の中で、この瞬間ほど安心感を覚えることは無い。
父が、帰ってきて居る。
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