鴉《短》

自分の家のドアの前に立ち、息を吐いて、ドアノブに手を置く。

一日の終わりと、始まり。
この瞬間、私は人形になる。

決して何があっても動じないように。
どんな痛みにも顔をゆがめないように。

力をこめて開ける。


…そこは、静かだった。


電気がついており、視線を下げてみると革靴が目に入る。


そこで、ほっと息を吐いた。


一日の中で、この瞬間ほど安心感を覚えることは無い。




父が、帰ってきて居る。



< 6 / 24 >

この作品をシェア

pagetop