鴉《短》
にぎやかな、食卓だった。
他愛も無い話が楽しげに転がり、
耳に届くのは、幸せに満たされた母の笑い声で。
笑顔があって
あたたかい空気があって
幸せな家族の風景が、そこにはあった。
「進路は、どうするんだ?」
父が、柔らかな笑顔でそう聞いてくる。
「就職、する」
その言葉に、目を見開かれた。
「就職?…この前の模試の結果だって良かったんだろう?進学は…」
その言葉を遮り、首を振る。
「進学は、考えてないよ」
「そうよ。だってみっちゃん、就職したいって前から言っていたもの」
横からそう言ってきた母の言葉に、父は、少し訝しげに眉をよせつつ、そうなのか?と私の顔を覗きこんできて。
私は、迷わず笑顔で頷いた。
……本当は、進路についての話しなんて、母とは一度もしたことは無いけれど。