ひまわり〜あたしの心に咲いた花〜



6階の、綺麗な個室。


6B05室に、その病室は有った。


【浮田皋】


名前は、そう書かれていた。


正直、“うきた”は読めたけど、名前が読めない。


皋……?


「名前、なんて読むの?」


あたしは浮田を招き入れながら、さり気なく尋ねていた。


やっぱり、呼ぶとしたら名前が良いから。


「あぁ、さつきです。浮田皋」


「ふーん、女みたいな名前」


「そう仰るあなたのお名前は?」


皋の答えに、あたしは妙にどきりとしてしまった。


あたしは名前を答えるだけだというのに、まるで時間が止まってしまったかと錯覚するほど、黙り込んでしまった。


誰かに名前を尋ねるのも初めてだったし、こうしてわざわざ名前を尋ねられるのもなんだか気恥ずかしいような気がした。


「……優里だよ。芦屋、優里」


あたしはぎこちないロボットのように答えた。





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