ひまわり〜あたしの心に咲いた花〜
「芦屋、さんですか」
皋はそう言った。その時、あたしは何となく悲しくなったと言うか、淋しくなった。
心のどこか、片隅で、名前で呼んでほしいと思っていたから。
「優里で良いよ。上の字で呼ばれるの嫌いだし」
あたしはぶっきらぼうに言う。すると、皋は何だか恥ずかしそうに、ふふ、と微笑む。
「それじゃぁ、俺のことも呼び捨てにしてくださいませんか?俺だけ呼び捨てなのは、気が引けますから」
「うん。初めからそのつもり」
あたしはなんでもない事のように返す。すると、皋は嬉しそうな表情で、「ほんとに?」と尋ねてきた。
あたしが「うん」と言いながら頷けば、「嬉しい」と返ってくる。
「俺、生まれた頃からこんな感じだから、呼び捨てに出来るような、一緒にこうして話せるような存在が居なくて。
今、凄く幸せです。ありがとうございます」
ベッドに腰掛けながら、目を細めて笑う皋。あたしはただ、その入院歴の長さに驚いていた。