ひまわり〜あたしの心に咲いた花〜
「イタッ」
あたしが声に出してそう言うと、目の前から「すみません!」と返ってきた。
顔を上げると、同じくらいの年の少年が、あたしとはまったく違う方向に頭を下げている。
変な奴だ、と思いながら、あたしは苛立ちを含んだ声で、そいつに向かって言った。
「そっちじゃないんだけど」
「え!?あっ、ごめんなさい…」
そいつはすまなそうに言うと、手を空中に彷徨わせた。あたしはその時理解した。
こいつ、目が見えないんだ
「すみません、今日は調子が良かったから、病院を抜け出して散歩してたんですけど、迷子になってしまって……何せ、目が不自由なものですから」
少年は困ったように言った。確かに、焦点は合ってないように見えるし、瞳の色は濁っていた。
しかし、長い前髪から覗く顔は思いの外端正で、あたしは少しの間見とれてしまう。
そして、思わず口から言葉が出てきた。
「病院どこ?送るけど」
少年の驚いたような、嬉しそうな表情は、凄く印象的だったのを鮮明に覚えている。
思えば、この瞬間から、あたしには変化が訪れていたのかも知れない。