ひまわり〜あたしの心に咲いた花〜
薄暗い廊下に、ぼんやりとガラスから差し込む光が見えた。其処に皋は居るんだ。
足が進まなくなるのが判った。
何が嫌なの?
何が怖いの?
あたしは明奈の後ろ姿を眺めながら、指紋一つない、綺麗なガラスを覗き込んだ。
「………!」
点滴のみならず、口にもマスクのような透明な緑色の物が当てられていて、顔色は血の気が無く、まさに蒼白だった。
手を伸ばさないと、消えてしまいそうな────…
あたしは思わずガラス越しに手を伸ばしてしまう。勿論、その手は彼に届く前に、温度の無いガラスの壁に遮られる。
行き場を無くしたあたしの右手は、透明な板の前で虚しく動きを止めた。
───冷たい
ガラスの冷たさが、あたしの手から温度を奪う。
──怖い、
そうか、あたしは。
この温度のように、彼が冷たくなっていくのを見るのが嫌だったんだ。