僕の記憶が消えていく

それでも時は流れるもので瞬が心を閉ざしたまま退院の日を迎えた。


『瞬、今日はお祝いだぁ。食べに行こう。』  


退院のために仕事を休んだお父さんはとても嬉しそう。


『何がお祝いだよ。』


素っ気ない態度で呟く瞬。


『そんなこと言わないでお父さんだって瞬が家に帰ってくるのずっと楽しみに待ってたんだし…。』


『どうせすぐに戻ってくるんだし。』


瞬の気持ちを考えるとそれ以上何も言えずお父さんも寂しそうな顔をした。


『お母さん、家でカレーでもしようか。今日はお父さんが作るよ。』


瞬の気持ちもお父さんの気持ちも痛いほど伝わってきて胸が痛んだ。


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