僕の記憶が消えていく

『瞬、久しぶり。』


タイミングよく香吏奈がお見舞いにきてくれた。


『瞬のお母さんに聞いたよ。翔大君の事。』


『翔大が死んで俺、今まで感じなかった音がやけに耳につくんだ。』


『どういうこと?』


『例えば救急車のサイレン。搬送されてくる奴が死ぬんじゃないかって。他にも看護師が慌てて機械を運んでいく滑車の音とか。』


俺は死というものに臆病になっていて医療関係の音には特に敏感になっていた。


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