A baby's leaf
教室に戻ると、皆は掃除のための移動を始めていた。
なのに、まだ北沢くんの姿はある。
あたしは彼と目が合わないようにして席に向かう。
次の体育の道具を持って掃除場所へと向かおうとしたとき。
ポケットから落ちるキーホルダーの付いた鍵。
拾おうとしゃがんだあたしの影と、重なる影。
顔を上げると、北沢くんの顔。
あたしは思わず顔を下に向ける。
北沢くんはあたしの鍵を拾って差しだす。
「好きなの?そういうの」
あたしが受け取った鍵を指差しながら尋ねる。
「うん…まぁ」
あたしは曖昧に答えると立ち上がる。
「ありがと」
それだけ言うと、出口に立つ裕美の元へと向かう。
鍵に付いたキーホルダー。
圭介にもらったマスコットを握りしめて。